「……」
すれ違いがなければ、
キス、してた。きっと。
翠も、何の気なしの行動だったみたいで、生まれた空気感に戸惑いが滲んだ。
また、翠が遠くなる。
2人して数歩下がったこの距離が、さみしい。
「…っも〜!かわいい顔が腫れ上がったらどうするの〜?」
気まずいなんて感じてほしくなくて、
楽しかったなって思ってもらいたくて、
必死で冗談を探した。
「え?聞こえない」
それなりに声を張った私に対して、トボけた顔して耳に手を当てる翠。
「またそうやって〜!絶対聞こえてたでしょ!」
「理解し難いことは受け入れない耳だからさ」
「そんな耳ある?」