「そしたら御賽銭、一万円くらい投げ込んだ方がいいんじゃない?」
私も翠に乗っかって、冗談を言ってみる。
ニヤッと口の端を上げて翠をみると、ワザとらしく眉をひそめた。
「高すぎだろ!駄目だった時ダブルで堪える」
「はははっ」
他愛のないこんなやりとりでさえ懐かしい。
付き合いたての頃はしょっちゅうこんな感じだったっけ。
「ここは笑うとこじゃない」
ふわっと、翠の匂いが近付いた。
「……っ」
少し遅れて頬っぺたに痛み。
色素の薄い瞳と視線が合わさって、私の表情が映るほど、縮まった距離。
どきん、と。
心臓が跳ねた。