「お姉ちゃん、やめて!」

里奈に言われても、

あたしは笑うだけだった。



次の日里奈が学校へ行っている間、

あたしはベッドの上で

自傷行為を繰り返していた。

自分の体から流れる血を見て満足していた

血を見て「きれい」とすら思っていた。

そのとき、家の電話が鳴った。

最初は無視していたが、

鳴りやまない電話にイラつき

受話器を取った。

「神崎です」

「夏菜か?」

久しぶりに聞く父の声だった。

お父さん助けて!

あたしはそう言いたかった。

でも父は、あたしのことなんか

眼中になかった。

大切なのは、いつもあたしではなかった。

「お父さん、あたしね……」

あたしが話し始めようとすると、

父は話を遮った。

「一樹が捕まったんだよ」

兄の話だった。

お父さんは、あたしより

お兄ちゃんが大事なんだね。

あたしたちのこと心配してくれないの?