第一話 工藤優里



少し明るく、少し暗い風景。何色なのかわからない。でも何故か落ち着けている。ここはどこなのか、なぜここにいるのか、私はどんなに考えてもわからない。きっと誰もわからないだろう。音もないこの空間、そう…音もな…

ジリジリジリジリジリジリッ
ジリジリジリジリジリジリッ

「〜〜ああぁぁ!もう!うるさい!!」
『お前だ一番うるさいのは!朝っぱらからでかい声を出すんじゃない!』
「だって時計が…!」
『お前が目覚ましセットしたんだろーが。』
「うぅ…。」
言っていることがごもっとも過ぎて言い返せない。
せっかくいい気持ちだったのに…
怒鳴った私を怒鳴った父は、ちょうど私を起こしに来たようだ。1階にある父の部屋から2階の私の部屋まで起こしに来てくれるのはとてもありがたいのだが、この時間だけは邪魔されたくないものだ。
『ほら、早く飯食いに来い。』
「は〜い…」
少し眉を下げて怒っているような呆れたような顔を見せた父は居間へ降りていった。
私はだるがりながら1階にある洗面所で歯を磨き、顔を洗い、そして父の待つ居間へと向かった。すると、いつもとは違うとてもいい匂いに腹が鳴る。匂いだけでヨダレがでそうだ。
テーブルをみると、いつもより手の込んだ朝ごはんが並んでいる。
「どうしたの?これ…」
私はご飯を見ながら父に聞いた。
『何故かわからんが、ちょっとそうゆう気分になってな。』
父ははみかみながら頭をかいた。照れているのだろうか。気持ち悪い。なぜ照れる。
「いただきまーす。」
父が気持ち悪く思えたのでスルーしてご飯を食べた。味はいつもどおりで少し残念だった。