「…んむぅ…?」
眠りから目覚めた彼女は日々の日課を繰り返す。
かつらを被り、カラコンをつけ、町に出る。
今日も食材調達に出発だ。
「ふ~ふ~ふ~ん♪」
鼻歌まじりにご機嫌で下りていくと、どこからか威勢のいい声が聞こえる。
町が近い証拠だ。
体中がむずむずして堪えられなくなり、れいんは勢いよく駆けてゆく。
「へーい!いらっしゃい!いらっしゃい!」
「おじさん、これおひとつくださいな♪」
「よっ!ねぇちゃん、べっぴんだねぇ」
「お世辞をどうもありがとう」
『ありがとう』と『ごめんなさい』は必ず言えるようになりなさいと、幼いころ母親に教えられた。
今ではもう顔すら思い出せないが。
「お世辞じゃねぇのに…」とかなんとかぼやいている八百屋のおっちゃんは華麗にスルーし、れいんは新たな食材調達のために足を進める。
「あとは…、これと…、これと…」
「あー!れいんだぁー!」
ぎゅ
「きゃっ」
お腹当たりに違和感を感じ、驚いて振り向くとれいんより頭2つ分は小さいチビッ子達が群がっていた。
「れいん、今日は何して遊んでくれるの?」
「わたし、おままごとがいい-!」
「だめだよ、れいんは僕と戦隊ごっこするの!」
「えー!この前もやったじゃん!」
「その続きなのー!」
「ずるいよー!」
足元でキャイキャイ騒いでいるチビッ子達をなんとか宥め、公平に遊んでやる。
しかし、結局帰宅は遅くなってしまった