「……ところで雄大。前から聞きたかったんだけど凛とはどういう関係なの?」

「い、壱樹……」

突然、何の前触れもなくそんなことを口走る壱樹の制服の裾を軽く引っ張って、制す。笑顔だった雄大の顔は一気に真剣なモノに変わり、答えを聞くのが怖くて咄嗟に視線を逸らした。
あの日のことはもう思い出したくない。


「……別に。ただの中学時代の元カノ」


ーズキン。

答えなんて最初から分かってたのに、どうして今更、こんなに苦しくなるんだろう。理由は簡単で、まだ私が雄大を好きだから。そんな私の気持ちもお構いなしに深く追求してくる壱樹。

「二人付き合ってたんだ。何で別れたの?」

「…………」

「……っ、やめて」

「ふぅん。答えられない事情ね」

机に浅く腰掛けたまま含み笑いで私と雄大を交互に見る壱樹。三人の間にはしばらく重苦しい沈黙が続いて、それを破ったのは壱樹の思いもよらない言葉。

「まぁそんなことどうでも良いや。それより雄大に一言だけ言っておきたくて」

「……んだよ」

「凛は俺が貰うから。良いよね?」

開いた口が塞がらないとはまさにこのこと。唖然とする私をよそに、壱樹は涼しげな顔で雄大の答えを待っている。