手紙をポケットに乱暴にしまう雄大は、中学の頃から誰にでも優しかった。その優しさはいつも私をドン底に叩き落とすんだ。


「お前、選抜受けんのか?」


少し濡れた茶髪をかきあげ、私を真っ直ぐな瞳で射抜いてくる雄大は相変わらずカッコ良くて、上手く視線を合わせられない。

「え?あっ、うん!でも私、馬鹿だからまだまだ勉強不足でこうして壱……
葉山君に放課後教えて貰ってるんだよ」

「へぇ。イツキに教わるのは間違ってねぇけど」

「……う、うん」

「そいつのスパルタ指導、マジで手加減ねぇからな。俺もバスケの試合前は夜遅くまで練習してっから勉強どころじゃねぇし、そん時はイツキに世話んなってる」

「雄大が?」

「ちょっと。人のこと鬼畜みたいに言わないでくれる?貴重な時間を費やしてまで教えてやってるのに何その態度。礼は言われても悪口言われる筋合いないね」

「ふっ、わりぃわりぃ。んな怒んなって」

ふてくされる壱樹を面白そうに笑う雄大。何年ぶりかに見るその笑顔は前まで私のすぐ隣、触れる場所にあったのに。

そう思うと心が張り裂けそうに痛いんだ。