意地悪そうに口角を上げて笑う葉山クンに、もしかして試された………?そうだとすれば、今まで同情する人はいても葉山クンのように「助けない」と面と向かって言う人に初めて会えた。

「ふっ。葉山クンって変な人~」

「それはお互い様ね。壱樹で良いよ」

「壱樹?じゃあそう呼ぼうかな」

そう笑顔で答えれば、壱樹は瞳を見開いて照れたようにソッポを向く。誰も居ない教室をおおうオレンジの夕焼けが、壱樹の頬をほんのり赤く染めていた。
……その綺麗な横顔を見ているとつい。

「二卵生でも仕草や表情は似るものだね」

そんな言葉を口走っていて、表情を一変させた壱樹はあきらかに不機嫌そう。

「あいつは父親似で俺は母親似。似てるなんて言われたこと数えるほどしかないよ」

「そうなんだ」

「この間からやけに美月のこと聞いてくるけど、あいつと何かあったの?」

「え!?いや、別に……」

「ふぅん」

探るような視線を向けてくる壱樹から逃げるように、顔を背ける。壱樹が美月ちゃんの秘密を知ればどうなるの?きっとかなりのショックを受けるに決まってる。

やっぱりあの事は、絶対に言えないよ。