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「ただいまー」




もう小さい頃からの日課となっているその言葉を無意識に言葉にしながら玄関のドアを開けると、1匹の猫が走り寄ってくる。




“ニャー”




ローファーを脱ぐ私の足に擦り寄ってくる飼い猫である“パン”は、何度も私を見上げながら鳴く。




「パンちゃん、ただいまー。よしよし」




パンを抱き上げ、綺麗に整っている毛並みに頬ずりをすると、ゴロゴロと喉を鳴らしながらパンも擦り寄ってくる。




「おかえり。今日少し遅かったわね」




リビングと廊下を仕切るドアからお母さんが顔を覗かせてそう言った。