「月の語源って知ってる?」

ふいに友達の月夜が聞いてきた。
名前の漢字について調べる課題が少し前に出て以来、月に興味をもったらしい。

「知らない、どんなの?」

「有力な説は、太陽の"次"に光るからなんだって〜。」

「へーえ。有力な説"は"ってことは、有力じゃない説もあるの?」

「ふふっ、そうだよっ♪ 月って、月に一度輝きが"尽き"るでしょ?だからっていう説もあるんだよね〜」

「そ、そうなんだ」

そんなにロマンチックな語源でもないのに、月夜は楽しそうに話している。

「おはよー」

「おはよ、空くん♪」

彼は空くん。
スポーツもできて勉強もできて、割と格好いい。
月夜の彼氏だ。

「あれ?"アイツ"は?」

「あー、太陽?ホント美花は太陽好きだね」

「ちがっ!」

そんな訳ないじゃんって言いかけた途端。

「俺がなんて?」

「悪口言ってたの!馬鹿!!」

「ええっ?!酷くねー?俺泣いちゃうわ〜」





こんな日常がいつまでも続けばいいと思っていた、高校2年生の春。