「ほんっとーーーにゴメン!!!」





昼休みに入り、一番に私の所に来て20分以上も目の前で手を合わせて謝っている彼。

「あの、本当にもう大丈夫だから気にしないで?」

「無理無理!気にする。ホントごめんな」


少し茶色がかった髪の毛は染めたのではなく、生まれ持ったものなのだろう。その興味をひかれる頭を見つめながら、私は言葉を繋いだ。


「大丈夫だって!ほら、どうもなってないでしょ?」

「…うん?いや、でもやっぱゴメン。
名前は?」

そういって顔を上げた彼の顔はとても印象に残る顔立ちだった。
少しだけ焼けた肌。左の目の下にはホクロが2つあり、薄い唇から覗く白い歯が健康的で髪の毛の色とよく似合っている。彼は芸能人にいてもおかしくないようなキレイで整った顔をしていた。
私は思わず見とれそうになりながらもどうにか自分の名前を言うことができた。

「…と、富澤です」

「富澤さん」

「富澤南理(とみざわなんり)」

「富澤南理」

「あなたは?」

「プリンセス」

「…。」

すると、他に3人の男子が私と私に謝っている彼のところに来た。

「富澤さんごめんね、コイツが教室でバスケなんてしたせいで」

「あ、いえ!私はもう大丈夫」


確かに当たった直後は鼻がとてつもなく痛かったのだが、授業を受けている間に痛みは治まってきたし、鼻の頭が赤くなりすぎて酔っ払いみたくなることは阻止できた。1時間目の口呼吸での掃除機のような空気の吸いっぷりもなくなり、今はもう落ち着いて鼻呼吸することだってできる。完治したのだ。
それより、ちゃんと当てた本人が謝ってくれている。