「早く救急車呼ばないと!」
俺はカバンから携帯を取り出す。
「……迷ってるの」
「え?」
戸山の予想外の言葉に俺の動きは止まる。
「花月は睡眠薬飲んでるんだぞ?!」
呼ばないと、早く呼ばないと……。

「確かに睡眠薬は落ちてるんだけど、多分、まだ飲んでないんだよ」
まだ飲んでいない……?
横たわっているのに……?
俺には意味が分からなかった。

「ここに、薬の入れ物あるじゃん? 落ちてる薬がさ、入れ物の空いてる数と一致するんだけど……」
そう言って俺に、拾った入れ物と薬を見せてくる。
確かに数は同じだ。
辺りを見回しても、他に入れ物や薬と思われるものはなかった。
「って、ことは、飲む前に倒れたってことか……?」
「そういうことになる……」
「……どうする……?」
俺たちは顔を見合わせる。
「このまま放置ってのも、あれだけど、救急車呼ぶかどうかも悩むよね……」
「でも、一応薬飲んでても飲んでなくても倒れてるから、呼んだほうがいいんじゃないのか?」
「そっか、そだね」
俺が救急車に連絡しようとしたとき、花月の体が一瞬動いた。

「舛里! 分かる?! 大丈夫?!」

戸山が一生懸命に声をかけている。
俺も一緒になって声をかけた。

「花月!! 起きろ!!」
伝えたいことがある。

「花月!」
「……ん……」
花月が微かに声を出した。
それに続いて、外山が声をかける。

「お願い! 舛里! おきて!!」
戸山の目にはうっすら涙が溜まっていた。
「……、ゆ、う……? と、……芦田……? どうして、……?」
花月は頭を抱えて混乱している。

「そんなことより、大丈夫か?!」
もし何かあるなら早く救急車に連絡しないと……!
「私……、どうして?」
「え?」
花月の言葉に俺は反応する。