横たわっている花月の周りには、色々なものが散らばっていた。

カミソリ、紐、ガムテープ……。
――自殺未遂……?

「なぁ戸山……。これって……」
それ以上は言葉にしたくなかった。
「分かってる。言わないで」

そう言うと戸山は花月の元へ駆け寄った。
外山は一生懸命声をかけている。
2人をただ呆然と眺めていると、花月が紙を握り締めているのが目に入った。

「ちょっと、ごめん」
俺はそう言うと花月の手からその紙をとった。

紙は2枚。
1枚目にはたくさんの自殺方法を考えたのか、三角やバツのようなものが、たくさん書き込まれていた。
唯一マルが記された方法は、睡眠薬。

……花月は睡眠薬を飲んだのか。

2枚目に書かれていたのは戸山に宛てた手紙だった。
俺のことも書かれている。

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優。ありがとう。
きっと唯一、無意識に信じられていた。
本当にありがとう。

優、芦田に伝言お願いするね。

初めて話したとき、
嬉しかった、って。
友達になってくれるって
言ってくれたとき、
すごく嬉しかった。

優に会える他にも、
学校に行く楽しみが増えた。

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短い文だった。
だけど読み終わったとき、俺の目にはうっすら涙が溜まっていた。

同じことを外山から既に聞いていたのに、花月の字で読むととても心に響いてきた。

そして改めて思った。
花月のためになれてよかった。
そして、俺の最終的な判断が間違っていたことを思い知らされた。

最後の1文は消されていて、読み取ることはできなかった。

――ちゃんと話がしたい。
花月がいなくなるのは嫌だ。
助けないと……。