「このこと、涼に黙っとくわけにはいかんで?」
隼人先輩が強い口調で言った。
「なら、言えばいいじゃないですか」
「……ええんのん?嫌われるで?」
「私、悪い事してませんから」
「お前…この後に及んでまだそんなことを……!」
脅しでもかけたつもりなのだろうか、この先輩は。
私はフッと鼻で笑いながら俯き、再び顔を上げた。
「2年間一緒の隼人先輩と17年間一緒の私の言い分、涼はどっちを信用するんでしょうかね?」
「……腐ったな」
「私は涼のためなら、どこまでも腐ってみせますよ」
涼は絶対、隼人先輩なんかより、私の方を信じるに決まっている。
悪いね、隼人先輩。
たった2年だけじゃ、15年間のブランクなんて埋めれませんよ。
「棗………」
「あ、表現が悪いですね。私は悪くないです。寧ろ被害者ですから」
「被害者…?この状況でよくもそんな」
「私は!!………ただ、涼が好きなんです」
「たかが涼の事が好きでここまでせえへんやろ!」
「たかが………?」
その言葉に、私はカチンときた。
私の気持ちが、「たかが」の一言で済まされてる…