「…やっぱり気付いとってんな。この子と涼のこと…」
「気付かないほど、私が2人を見てないと思いますか?」
乱れた髪の毛を直すこともせずに、隼人先輩はジっと私を見据える。
私は杏奈の上から退いて、立ち上がった。
杏奈は顔を伏せたまま、首を抑えて泣いている。
私は隼人先輩の目も気にせず、その場で制服のブラウスを脱ぎ始めた。
「ばっ…!お前っ」
「杏奈、脱いで。これ着て帰って」
「な……んで……」
「血みどろなの、涼にバレたら困るから。もうサッカー部終わったみたいだし」
私は隼人先輩を見て言った。
そんな私と杏奈を見かねて、隼人先輩は言った。
「…こんなことして、涼が喜ぶとでも思っとん?」
「いいえ、私が嬉しいです」
「……っ…!?でも涼にバレたら困るんやろ!?何で…」
「歯止めが利かないだけです」
表情を変えないまま、隼人先輩を見た。
怖くない。
今、1番怖いのは、
私自身だから……
そう。本当に歯止めが利かなくなりそうだ。
涙を流すだけではもう、自分の行動を抑えられないような気がする。
だから今、私は杏奈にこんなことを…
今気が付いた。
私の両手は、杏奈の赤い血でベットリだ。
これが…私の犯した罪……?
……いや、違うよ。これは杏奈が犯した罪に対して私が制裁しただけ。
私の罪じゃない……。私が悪いわけじゃない……。