杏奈の問いかけに私は首をそっと横に振った。 首を振って少しして、私は軽く俯いた。 イライラする。 腸が煮えくり返る感情って…こういう事を言うの…? 「………じゃん」 「え?」 「持ってるわけ、ないじゃん」 「……棗…?」 「だって、涼が大事にしてた指環、杏奈の指にはまってるもん」 私が目尻に涙を溜めながら杏奈を睨む。 そんな私を見て、杏奈は咄嗟に自分の左手を隠した。 それが、決定打。