「あ、櫻子ちゃん。あれが、俺らの学校ね。」
そう言って、奏くんが近くの建物を指さした。
見た感じ、結構綺麗だな。
「楽しみだな〜。日本の学校、久しぶり!!」
校門をくぐると、【新入生 体育館 ➡】って表示がある。
体育館前に人だかりができてて、みんなクラスを見てるっぽい。
あたしも見ようと、人だかりのちょっと後ろで
つま先立ちしようとした。
と、その時だった。
「きゃーーーーーー!!!!!」「王子だ!王子〜!」
「涼介く〜ん!!奏多く〜ん!!」「こっち見てぇ〜!!」
女の子達から黄色い悲鳴が上がった。
な、何事!?
驚いていると、沢山の女の子が
あたし…じゃなくて涼介と奏くんの周りに一気に押し寄せた。
あたしはちっちゃいから、すぐに埋もれて3人とはぐれた。
…と思ったら、横に葉瑠くんがいた。
やっぱ、ちっちゃいって嫌だな。
葉瑠くんは、ため息をつきながらあたしの方を見た。
「ね?櫻子。来たらわかったっしょ?」
「うん…でもごめん、状況がよくわかんない…。
あの2人って、アイドルか何かなの?んな訳ないよね?」
「ん〜…芸能人ではもちろんないけど、うちの学校ではそんな感じかな。
奏多が白王子って呼ばれてて、涼介が黒王子って呼ばれてる。」
「し、白王子と、黒王子って…」
まさかあたしの幼なじみが、こんなに人気なんて…
あたしがいない3年間って、なんかすごい時間だったんだな〜…
「この分じゃ、あいつらしばらく抜け出せないだろうから
俺らはクラス見るか。」
「そうだね。」
女の子達が2人の方に押し寄せたから、クラス表の前は男の子だけになった。
さっきよりすいたから、見やすい。
「あ、あった。」
あたしは名字が『岩尾』だからすぐ見つかった。
え〜っと…1―Aか。
あ、奏くん一緒だ。それに涼介も。
そして、まさかの…1番下に『渡辺 葉瑠』の名前。
これ、絶対誰か仕組んでる。
「奏多と涼介はさ、必然的に同じクラスなんだよ。」
あたしの心を見たかのように葉瑠くんが言った。
何で考えてることわかったのかな…?
「何で一緒になるの?」
「多分、2人の“王子"は、まとめとかなきゃ先生も色々めんどくさいんじゃね? 」
「そんな適当な…」
これから始まる、日本での久々の学校生活。
不安いっぱいのスタートです …