「涼くん、ほんとどうしたの?
昔はよくあたしと奏くんに泣きついてたくせに。」
あたしは聞こえないように、ちっちゃい声で言った。
…つもりだったけど、聞こえてたみたい。
「そんな昔の話今関係ねーだろ。おまえこそよく泣いてたじゃんか。」
口調はこんなんだけど、ちょっと照れて赤くなってる。
なんだ、こういう所は変わってないじゃん!
「うふふッ…」
「櫻子ちゃん?何笑ってんの?」
「んー?なんか、楽しくてさ。
奏くん、涼くんと久しぶりに話して、昔みたいだな〜って。
涼くんはなんかこんなになっちゃったけど」
「こんなって何だよ。
…てかおまえ、高校生にもなって涼くんって呼び方やめろよ。」
「じゃあなんて呼べば良いの?てゆーか、涼くんこそおまえって呼ぶのやめてよ!
前は櫻子ちゃんて呼んでたくせに〜」
「適当に、呼び捨てでいーよ。
…で、櫻子って呼べばいいんだろ。」
とくん…
胸が鳴る。名前を呼ばれただけなのに。
なんでかな…?
「じゃ、じゃあ、あたしは涼介くんって呼ぶね!!!」
つい声が大きくなっちゃった。
落ち着け!あたし!
「だから『くん』って付けんなよ。」
「はいはい、わかりましたよ。りょ、う、す、け!!」
「…ッ!」
ん?何か、涼介顔赤い気が…
ま、気のせいか!
「奏くんも、呼び捨ての方がいい?」
「や、俺は櫻子ちゃんが呼びたいように呼んでいいよ。」
奏くんが、にこっと笑う。
こうしてみるとわ奏くん、かなりのイケメンだぁ…
笑った顔とか、キュンとしちゃった。
あたしは思わずじーっと奏くんの顔を見つめてしまった。
「あ、あの…櫻子ちゃん?俺の顔、何か付いてる?」
奏くん、真っ赤になってる。
「ご、ごめん!何でもないよ!」
奏くんがかっこいいからつい…なんて、
恥ずかしくて絶対言えないよ。
「そっか。なら良かった。
でも櫻子ちゃん…そんな風に男の顔、見つめない方がいいよ。」
「え?何で?」
「…なんででも。」