「あんたなんかっ、大っき…」


「…それ以上言ったら、怒るぞ紗英」


「っ」


久しぶりに彼の声で呼ばれた私の名前。


じわじわと視界が揺らいでいく。


「…泣くなよ。帰るぞ」


そっと指先で涙を拭ったと思えば、やっぱり彼は私の前を歩いてしまう。


もう、私は彼の後ろを歩けない。