「ちょい、ちょい、どこ行くの?」
「映画。観に行こうぜ!折角の休みなんだし」
「そりゃ、休みだけど」
何故に、佑真君と映画?
首を傾げると、ニカッと白い歯を見せて、
「俺の奢り!」
そう言ってくる。
これを年上の人に言われたら、本当!ラッキー!って間違いなく思うと思う。
でも、今回は相手が相手だ。
「佑真君の!?」
「そっ」
普通に返事してるけど、佑真君は小学生。
じゃあ、そのお金はお小遣いという名の佑真君の両親のお金なんじゃ……。
「流石にそれは……」
断ろうとそこまで言った時、
「奢られとけ!馬鹿葉月!」
とまたしてもニヤッと笑う佑真君。
「馬鹿じゃないし!」
「えっ!どこが馬鹿じゃないの?」
「全部じゃっ!!」
何だかうやむやにされてしまった感は否めない。けど、佑真君と繋いだ手が凄く温かいから、今回は甘えといてあげよう。
私のお財布にも優しいしね。
佑真君と二人で並んで映画館に向かう足取りは軽くて、こんな時間が続くのも良いかも…なんて思ってしまった事は私だけの秘密だ。