「早く言ってくれたらよかったのに」


息をつきながら、政宗さんは面倒くさそうに話した。

ドアを開けていないのに、私と政宗さんの間に冷たい風が流れたように感じられた。


「そうですよね。ごめんなさい。早く話たかったんですけど」


「どうして隠そうとしたんですか」


「政宗さんに言うタイミングを逃してしまって」


「そうですか」


政宗さんのかたく拳を握りしめ、体全体で震えているのがわかる。


「そんなに僕に秘密にしたいんですね。落ちぶれたもんだ」


「政宗さん、秘密だなんて」


「きっと僕には秘密なことがたくさんあるんでしょうね」


「それは……」


「わかりました」


しばらく宙を仰ぎ、私をにらみつけた。


「時間を与えます」


政宗さんの声が震えていた。

時間を与える、って、もしかして別れることなのか。


「え」


「僕との付き合う時間を僕との仲を考える時間として与えるっていうことです」


「それは……」


「僕をとるか、別の人をとるか、考える時間てことですよ」


政宗さんからそんな言葉、聞きたくなかった。

どうしてもつなぎとめたかった。

私には政宗さんが必要なのに。


「政宗さんは、どうなんですか。私のこと」


「僕が好きっていっても、むつみさんが嫌いだったら仕方のないことですよね」


政宗さんの正しいことに何も言葉が見つからなかった。