私の名前は日高茉里梨(ひだか まりり)。15歳。


世界的にも有名な資産家を父親に持つ、日高財閥の令嬢。


本当ならわたしのお姉様の日高花梨(ひだか かりん)にめんどくさい役が来るはずだったのに、その重圧に耐えきれなくったお姉さまは、二年ほど前に蒸発したの。


その代理みたいに、わたしには大変な役回りを任せられた。


わたしは幼いころから籠の中の鳥みたいな生活を送ってきた。


学校へ行くにも、どこへ行くにもボディーガードが付いてきて、おかげで友達なんていたことがない。


やりたくもないピアノとか習字とか、茶道とかを毎日やらされて、でも嫌とは言えなくて。


お父様たちはそんなわたしを、とても素直な子だって褒めてたけど、やりたくないなんて言えない状況を作られてるんだもん。


仕方ないじゃない。


普通の女の子ができるようなことがわたしにはできない。


贅沢なドレスを着ても、高級な食材を食べても、なにも楽しくない。


服をどろんこにして駆け回ったり、友達と一緒にファーストフードを食べてる方が絶対に楽しい。


お父様が勝手に敷いたレールの上をこれ以上走るのは嫌。


だからわたしは家出を決めた。


唯一気がかりだったのは、ずっと相談に乗ってくれた使用人、秋草蓮人(あきくされんと)のこと。


蓮人はあたしの二個上の17歳。


親の莫大な借金を肩代わりして、それを返すために13歳のころから働きに来てる。


歳が近かったこともあって、ちょくちょくあたしと遊んでくれたりしてた。


お父様とかが居る前では『お嬢様』って呼んでるけど、二人だけの時は、『ひだまり』って呼んでた。