「わたし、この家を出ていきますわ」


わたしの突飛な発言に、お父様もお母様も使用人たちも驚いた表情を見せている。


「茉里梨、なにを冗談を言ってる! お前は我が日高家の最後の希望なんだぞ。花梨が家出したと思ったら、今度はお前か。一体この家の何が不満なんだ」


予想通り、お父様は怒鳴り散らした。


お父様の短気で傲慢な性格も、この家を出ていきたい要因の一つだということに、本人はまだ気づいていない。


一方でお母様は、肩をくずし床に膝を落としてワンワン泣いている。


泣いたらすぐ誰かが助けてくれると思っているのは、お母様の悪い癖。


じきに執事長のエドワードさんがお母様の肩を持って、引き起こす。


他の使用人たちもそれを支えに入る。


なんて見飽きた光景なの。


「何か言わないか、麻里梨」


せっかちなお父様はわたしの返事を焦らす。


「この家があまりにも窮屈だからですわ。花梨お姉様が出ていった気持ちがようやくわかりましたわ」


もちろん、これが本心だった。


でも、なんだかんだ言ってもわたしに甘いお父様は、「だったらお前の望む通りにしよう。言ってみろ」と、簡単に態度を変えてきたのだ。


もうその手に乗るもんか。


「お断りします」


わたしの決意は固かった。


誰に止められようとも、この家にとどまるつもりはもうない。


「そうか…わかった。なら、お前なんかもう娘じゃない!!」


「あなた…」


去っていくお父様に、立ち尽くすだけのお母様。


わたしを止めれる者はもう誰もいないの。


これで今日から自由。