2月8日、日曜日。
その日は、快晴――…だったと記憶している。

太陽の熱が、雪を融かして…シャーベット状になった路面の上を、その日、田迎るいは車を走らせていた。

免許は取りたて。
そして、こんなに朝早く家を出る理由は…誰も知らず。誰にも言わず。

午前7時15分――…。
まさに、そういった時間帯に。


単独の事故を…起こした。


じいちゃんが乗らなくなった新古車だと、彼女が友人に話していた…その、黒色の軽。

緩やかなカーブ。

シャーベットの雪がハッキリとタイヤの跡を残していて…。

右へと弧を描いた、軌跡。その終着点に、背の高い…頑丈な道路標識が待っていた。



その瞬間。
彼女の身に…何があったのだろうか。

発見された時には、衝突した車の左側がベコリと凹み…。
助手席側のフロントガラスが…破損。
内側へとダッシュボードがめり込んでいて。

その、隣り――…

運転席には、体の側面にだらりと腕を下げて。
俯いたまま、頭から血を流しているるいが…乗っていた。

意識は薄弱。
第一発見者は、近所に住む…中年の男性。出勤の途中で、歩道に乗り上げる車へと…気づいたらしい。

救急搬送された病院のICUにて、脳内の出血を止める為の点滴投与が始まり、吐き気と頭痛と昏睡状態が続いた。

左側頭部に、裂傷。
傷口付近の髪の毛を剃って、14針を縫う大怪我。

それにとどまることなく、もっと深刻だと思われたのは…。
アタマの中。

衝撃の勢いで脳が動き、それが頭蓋にぶつかったことによる…脳内出血。主に、右側。それは、5ヵ所にも及んだ。

幸い、命には別状はない。





この話を何故俺が知っているのか。
それは……、彼女の家族に詳しく聞いたこともあるが、つい昨日、るい自らもごく端的に…語ったからだった。

会うのは…今日で3回目。




ICUで…、こんこんと泥のように眠る彼女に会ったのが…最初だった。

それは事故の翌日。
9日のことだ。