「───送ってくれてありがと」 「おう、じゃあな」 「うん、またね」 遠ざかっていく楓の背中を見届けて、家に入る。 今日はあの婚約者はいないみたいだ。 「あ、アンタどこにいたのよ」 最悪だ。 運悪く、母親と遭遇してしまった。 「どこでもいいでしょ?」 「生意気ね。あたし今日ストレス溜まってんのよ。 ちょっと来なさい」 いつもより口調は大人しいものの、どこか怒りが混じっていて。 このあと何されるか、予想ができた。