「これより、1年A組の出し物
ロミオとジュリエットが開演します。」
アナウンスが聞こえて、舞台が暗くなる…。
痛いけど、大丈夫。
岡本くんも雅ちゃんも、皆がいるから。
私は、すぅと息をすって舞台に向かった。
ロミオとジュリエットの出会いも順調に行き、
ついに見せ場の1つ、バルコニーの場面になった。
「〝おぉ、ロミオ…〟」
ここの場面は、岡本くんを想像するといい演技が出来るって分かった。
だから岡本くんを…想像……っ
だ、ダメ…!さっきの本番前の岡本くんの行動とセリフ思い出しちゃうっ!
「…ジュリエット、とても愛おしそうな表情をするのですね」
岡本くん…?
あ、笑った…!前に見たときと同じ風に微笑んでる。
「愛おしそうな表情…?
それをさせているのは、ロミオ様…貴方なのですよ」
岡本くんのアドリブに合わせて、
私もアドリブを言う。
演技のようで演技じゃない私のセリフ。
きっと、雅ちゃんだけが本心だと気づくはず。
「〝モンタギューって何?〟」
元のセリフに戻し、再び再開…。
その後も順調に行き、最後のジュリエットの死ぬ場面になった。
「ロミオ、私ずっとわからなかったの」
突然の私のアドリブにクラスの皆も、
岡本くんも驚いた。
岡本くんは閉じていた目をあけて、
その瞳の中には私を捉えてる。
「好きってどういう事なのか、分からなかった。
恋というものは怖いものね。
自分が自分じゃなくなるのですもの。
ロミオ様以外の相手と結婚を決められたとき、
ただただ嫌でした…。
私はロミオ様のお隣にこれからもいたい。
貴方がここで死んでしまうのならば、
私も貴方の横で死ぬわ」
岡本くんの頬に雫が何滴も垂れる。
なんで私…泣いてるの?
なんで私、こんな言葉スラスラ言えるの?
私が私じゃないみたいに口が勝手に動く。