「結城さんが怪我しなくてよかったよ〜」
「そんなことない!怪我するなら私じゃなきゃダメなんだよ!すずちゃんはジュリエット役なのに…」
結城さん、自分を責めすぎだよ…。
「先生、小鳥遊さん保健室に連れていきます」
「あぁ、頼む。」
その言葉と同時に、体がふわっと浮いた。
…これは…お姫さまだっこだ…。
スタスタと歩いて教室を出た岡本くん。
廊下にいる人達はチラチラ私達を見てる。
それになんといっても、岡本くんが好きな子たちの視線が痛い…。
「あら?どうしたのかしら?」
保健室について、保健の先生に足を見てもらった。
「痛っ!」
「骨に異常はないけれど、腫れがひどいし
歩くのもままならないと思うわ。
残念だけど、文化祭には間に合わない。」
そんな……。
私、ジュリエット役なのに、今から交代なんて…
いや、違う。
交代しなきゃいいんだ。
「先生、簡単な応急処置教えてください」
「え?」
「私、出ます。劇に。
せっかく皆が頑張って衣装を作ってくれたのに…それを無駄にしたくない。
無理してでも、止められてでも、絶対に出ます!」
少しの沈黙のあと、先生はため息をついて簡単な応急処置をしてくれた。
「いい?どうしてもダメになったら辞めなさい。
というか、無理やりでも辞めさせるわ。」
「…はい」
絶対に、私が出なきゃ。
衣装も作り直しなんてさせない。
それに…岡本くんがロミオ役だから…。
せめてその時だけでも役でもいいから
ロミオの好きな人にならせて欲しい。