それから暗くなるまで先生の熱血指導は続いた。




「いいか、小鳥遊。
バルコニーの場面はな、ロミオとジュリエットの中でも見せ場の1つであり、いろいろな人が知っている場面でもある。その場面はどこよりも完璧にしなきゃならない。」




先生の言うことは正しいと思う。




私もセリフを知ってるほどに有名な場面。
ロミオとジュリエットと聞いたら、そこのセリフが1番に思いつく。




「岡本も、小鳥遊のサポート頼むな」




「はい」




他のみんなより30分だけ遅くに残って、
それから帰宅。




まあ、必然的に一緒に帰る事になるよね。




「疲れた…」




「そうだね」




そうだね、なんて言いながら、疲れた表情全然してないよ岡本くん…。




「でも、ジュリエット役が小鳥遊さんじゃなかったらちょっと辛かったかも」




「え?」




それってどう言う意味…?




なんて聞けるはずもなくて、そこからはどちらも一言も発さずに家についてしまった。