「ほら、やるよ」
「う、うん!」
とりあえず岡本くんに逆らうと怖いので、私も台本を持って立ち上がった。
「〝おお、ロミオ、ロミオ!
あなたはなぜロミオなの?
お父様を捨ててください。名前もお捨てなさい。
それがお嫌ならせめてわたくしの恋人だと誓って下さい。〟」
私のセリフを聞いてがやがやしていた教室が一気にしーんとなった。
「もっと感情込めて言えないの?」
「セリフのある役をやるのは初めてなの!
そういう岡本くんはどうなのよ!」
私がそういうと、台本を見てすぅ、と息を吸った岡本くん。
あれ、なんか出来そうな雰囲気…?
「〝お言葉通りに頂戴いたしましょう。
ただ一言、僕を恋人と呼んでください。
さすれば新しく生まれ変わったも同然、今日からはもう、ロミオではなくなります〟」
………うそ…。ものすごい完璧…。
表情も、身振り手振りも、声の出し方にも迷いがない…。
皆も驚きのあまり開いた口が塞がらない。
「俺はよく主役やってたから。
少しは俺に応える演技しないと、変になるよ?」
…これはもう、嫌な予感しかしません。
チラッと担任の先生を見ると、目がメラメラ燃えていた気がする。
「岡本!いいぞ、最高だ!
小鳥遊!お前は今日から特訓だからな!」
「えぇ〜!?」
やっぱりそうなっちゃうんですか…?
「さぁ、やるぞ!」
そう言って台本を持ち私の元に来る担任の先生。
演劇バカ〜!嫌だよっ!