一瞬私の手を掴む千尋くんの手が緩んだのを見逃さず、私は千尋くんの腕を思いっきり叩いてしまった。
涙は止まらないし、こんなこと、するつもりなかったのに。
胸が苦しくて、悔しくて、悲しくて……。
「千尋くんなんて大っきらい!」
泣きながらそう叫んで、また走り出した。
今度は千尋くんは追いかけてくることは無かった。
私は走って、走って、家までとにかく走った。
家に着くとお母さんがいて、私を心配そうに見たけどそっとしておいてくれた。
多分、千尋くんと何かあったんだ。ってバレてる。
だってお母さんだもん。
それでも、何も触れずに1人にさせてくれたことが嬉しかった。