降り続ける雨はさらに強くなった
初めは離せと騒がしかった彼女も諦めたのか静かになった
それよりも病院まで行けるか心配だ
前も全く見えないし深い水たまりに足を取られる

「おい、大丈夫か?」

彼女がいきなり声をかけてきた

「大丈夫、キミに言われたくないけよ」
「うるさぃな!」
「名前……なんて言うの」
「美島 唯」
「へぇ、何してたの?あんな所で」
「……別に」
「ああゴメン、嫌なら言わなくていいよ」

なんか気になる
さっき会ったばかりなのに美島 唯って名前も聞いたことがある……気がする

「ありがと」
「ん!?」
「いや、別に」
「……」
「なんだよ!」
「はは、意外と素直だな」
「そんなんじゃない!」
「わかってるって」

意外と綾みたいな生意気な性格かと思ったけど可愛い所もあるんだな



5キロくらい走ったか大分疲れてきた
体が重い……

「やべぇ」
「どうした?」
「ちょっと……降りてくんない」
「おい、大丈夫か!?」

急にめまいがした
頭も痛い
意識がはっきりしない
彼女が何か言ってるが聞こえない
助けるつもりが俺が倒れてどうすんだ
情けない
目が霞む
寒い
なんだか眠くなった