切り刻まれた腕
長い傷跡から短い傷跡
深い傷跡から浅い傷跡

「繰り返すとね、何の為に切ってるのかワケわからなくなるんだよ」

リアルに見るのは初めてで
痛々しくて目のやり場に困り
リアクションが取れない。

「最近のは……」

「もういいって」

俺は凪子の手首を強くつかみ
めくられた袖をそっと下ろす。

「気持ち悪いなんて思ってない」
荒く言葉で俺は言う。

「傷跡の分だけ、悲しんで悩んでた」

凪子は強く握る俺の手を何も言わず見ていた。

「もういいから」

「……颯大君」

「これ以上増やすな。死ぬ気になれば何でもできる」

逃げてもいい
自分の殻に閉じこもってもいい

自分を傷付けて消えてはいけない。

「できない事もあるんだよ」

凪子は崩れて
そのまま俺の腕に流れる。

細い肩が俺の胸に落ちる。

「俺がいるから」

「……颯大君」

「ずっといる」

柔らかい身体を抱きしめ
凪子の鼓動を感じたい。
生きている
彼女の鼓動を感じたい。

夏の終わりの香りが漂う。