「大西さんとか松本さんは、たまに帰って来るの?」
「うーん。ふたりとも忙しくて、特に松本は忙しそう。今度ドラマに出るんだって」
「え?本当?」
驚いて凪子は俺の顔を見る。
うん……可愛い……じゃなくて。
「らしいよ」
時間は流れる。
色々あった俺達にも時間が流れ
それぞれがそれぞれの道を歩いてゆく。
「七瀬も松本も、凪子に謝っておいてって言ってた」
「何を?私の方が謝りたい。私達が転校して来なかったら、普通に幸せに暮らしていたのに、私達のせいで嫌な思いをさせてしまったもの」
寂しそうな顔もあの日のまま。
「七瀬は靴を隠してごめん……って、松本は凪子と中庭で言い争ってごめん……って」
俺がそう言うと凪子は黙る。
秋の風を感じながら
俺は何も言わない。
ただ彼女の言葉を待ち
ただ彼女と一緒に過ごす。
「今度会ったら、友達になるまでは図々しくて言えないけれど、少しだけ話をしたい」
小さな声で
彼女はそう言った。
「できるよきっと」
俺はそっと手を伸ばし
彼女と手を繋いでドロン山を見上げる。