玄関の方で物音がした。

誰か来たかな。

「ごめーん。今、掃除中だから勝手に入って来てー」
おじさんは大きな声で玄関に叫び「二日酔いだった」って頭を押さえる。

「とにかく。そんな感じだから、もしおじさんが凪子の連絡先を知ってたら教えてほしい」

「若いねぇ。それでいいの?」

「いい」

「後悔すんなよ」

「しない」

「そんなにあの子が忘れられないのか?」

「忘れた事はない」

「そんなに好きか?」

「……ずっと好き」

「了解わかった」
おじさんはイスから立ち上がり大きく伸びをする。

「教えてくれるの?」
やっぱり知ってたか。
もっと早く教えてもらえばよかった。
ドキドキしながらおじさんを見守ってたら

「教える」って簡単に言われた。

「凪子はどこにいる?」
迫って聞くと

おじさんは簡単に指を廊下に向かって指し

「そこ」って言った。

え?
聞き間違いかと思ったら
廊下から影が動いた。

「まだ好きなんだってさー。しつこいだろう俺の甥っ子は」
おじさんは笑ってその影に向かってそう言うと

「私もしつこいんです」って

柔らかな忘れられない声が耳に届く。