吸血鬼……と、いっても
町の住人は
不老不死ではないし
夜ごと生きてる人間を襲うわけでもない

ニンニクも食べれるし
キリスト教信者もいる

そりゃ
直射日光に弱いヤツも多くて
夏より冬の方が体調もいい
貧血気味のヤツは多いけど

ごく
ごく普通なのだけど

「人間の血を飲まなきゃ狂ってしまう」

智和おじさんはサラリと言う。

「僕達は血なんか飲んで……」

飲んでないと
否定できないものが
この町でひとつだけある。

幼稚園から高校まで給食に出ていて強制的に飲まされる物。
一般家庭の冷蔵庫に必ず入ってる物。

「プルミル」

俺が言うと

「正解」

おじさんは笑って答えた。

「プルミルなんてただのミニトマトの変形。そのまま食べちゃまずいからって、店頭には出さず隠してる。だってそんなもんは無いからな」

用は一番大切なのは
プルミルに混ぜる人間の血。

「だからカンスケさんは、我が町の守り神。大切な人」
おじさんは山に向かって一礼をする。

カンスケさんは
ドロン山の全てを知り尽くしている。

自殺の名所であるドロン山には、たくさんの人間が入り込み、カンスケさんは迷い込んだその人達を見つけて処分し、山から繋がるプルミル工場へと運ぶ大切な存在とおじさんは教えてくれた。

「処分って殺すの?」
凪子が初めておじさんに質問する。

頭の中で須田海斗の苦しそうな顔が浮かぶ。

須田海斗は生きていたのに……

「それは言えない。想像に任せる」

おじさんはそう言った。