「な、なんでしょかっ」

貧乏暦13年。
様なんてつけられることにも、こんな待遇にもなれてない菜穂の心臓は、今、生まれて初めての速度をたたき出していた。

顔も引きつり、ほほなんてピクピク動いている。


「申し上げにくいのですが、もしよろしければ、浴場にご案内して、よろしいでしょうか?」

「よ、よろしゅうございますぅ」

「お着替えは、こちらで用意してありますゆえ、ごゆっくり乙駆りください。傷口は、いじらないように」

「はひぃ~」

もう案内されるがままに、浴場に向かう。

思い返してみれば、最近はシャワーしか浴びていない。
しかも、2日に1回。

年頃の女の子としては耐えがたい屈辱だが、母の命には変えられない。

服だって、もう何年前に買ったのだか、わからない。


「どうぞ」