「このままだと、化膿しちゃうかも」

少年の澄んだ声と心配そうな表情は、菜穂の頭を混乱させるには十分だった。
 
気がついたら、菜穂の足は豪邸の前へと立たされていた。



「津野田志和。つのだ、しわ。これが僕の名前だよ」


「はぁ……」


豪邸は、見かけが広いだけではなかった。

中身もすこぶる広かった。なんと入り口はお城のようで、門を潜り抜けたかと思ったら執事やメイドがずらりと並ぶ中を車で運ばれ、さわやかスマイルでここが僕の家と案内されたのは、やっぱり予想を裏切らない、城そのものだった。