「ご飯食べてく?」

「え、でも母ちゃんが」

「大丈夫、君のお母さんには最高の料理を振舞ってるから。何なら電話掛けてみる?」

「……電話、ないんです」

 菜穂の家は、携帯すらもつながっていないのだ。

料金が払えないから。学校側からも、連絡が取れないと不満の声が届いているが、変な勧誘も鬱陶しいので、菜穂はそれでいいと思っている。

「そっか、買ってあげようか、電話ぐらいなら」

「ぐらい、じゃありません。これだけしてもらってさすがにお願いできません」

「どうしてもかい?」

「どうしてもです」

「じゃあ、ご飯は、いいよね」