「別人……これ、私?」

「もともと、きれいな顔立ちでしたから、やはりお化粧が映えるんですね」
鏡の中に映るもう1人の自分に見入ってしまい、菜穂はぶんぶんと顔を振る
と、もう一度鏡をよく見た。何度見ても、自分で間違いないようだ。

「お母様のほうには、執事が向かっています。お疲れでしょう?よければ今度ぜひエステにでも

「でも」

「お坊ちゃまが、自分から何かを望むのは珍しいことなんですよ、だから、私たちも何かして差し上げたくて」


 メイドは、寂しげに顔をそらした。まるで何かが引っかかるかのように。

「さあ、店に差し上げに行きましょう」

 されるがままに、菜穂は引っ張られ、志和の元へと連れられた。志和は出会ったときの服装のまま、紅茶をゆったり飲んでいた。