「ナニコレ」

「お着替えです」

「え? メイドさんこんなにいっぱい着るの? ファッションショー?」

「いえ、菜穂様が」

きょとんとした表情でメイドの顔と自分のほうを交互に見やる。
確かに、サイズは菜穂のためにあつらえたもので間違いない。
下着を先に渡され、柔らかな肌触りに感動しつつ、首をかしげた。


「どうして、私に、こんなに尽くしてくれるんですか?」

「お坊ちゃまが、あなた様を見初められたからです」

「味噌目? 腐っちゃったの? 醗酵しちゃったの、目玉。グロッキー……」

「そうじゃなく、惚れられたのです」

 真顔でメイドは答えるが、言葉が頭に入ってこない。

「とにかく、そのままではお風邪をお引きになってしまいます、何かご洋服を」

 たしかに、春だからといってこの格好では体調を崩すのも無理もない。世の中には、裸族というものもいるが、いくら貧乏で服が買えないからって、菜穂は常に上下きちんと衣類に身を包んでいた。