盆踊りとか地蔵盆とか、イベントは行かせてもらえんねんけど、原則的にタダが基本。
縁日とか夜店には連れて行ってもらえるんやけど、基本に忠実に、見て楽しむだけ。
 当時ボロアパートで、動物が飼えない俺は、カエルとかザリガニとか自分でとってきて飼っててん。せやけど、亀ってとられへんかってん。

 ほんで夜店でさぁ、『ゼニ亀釣り』があったんよ。
『ひよこ釣り』や『ウナギ釣り』や『うずら釣り』とかあってんけど、最初から無理なん分かってるやん?せやから「やりたい」って言わんねんけど、『ゼニ亀釣り』だけはさぁ、どうしてもやりたかってん!亀はとりに行ってもなかなかおらんし、もう自分の中では激レアアイテムなんよ。
泣きじゃくってゴネ倒して、なんとか一回だけオカンからお許しが出たんよ。メチャ嬉しくてさぁ、もうえらいテンションで、こんな夢が叶うのか!みたいな勢いや。ほんでゼニ亀釣りのおっさんにお金渡してチャレンジしたんやけど、検討むなしくアカンかってん。すごいヘコんでさぁ、ションボリしてたらさぁ、おっさんが
「ボク、どないしたんや?アカンかったんか?かわいそうに。」
「うん、アカンかった。俺、頑張ったんやけど。」「そうか、頑張ったんか!おっちゃんなぁ、ボクの頑張りに応えてサービスするわ!一匹持って行きよ!」
その瞬間に、その汚いおっさんが天使の様に見えたんよ。うーん、『フランダースの犬』の最終回みたいな感じやったわ。なんか汚いおっさんが輝いて見えるねん。不思議やなぁ。
 おっさんは「どうせやったら元気な奴持って帰りや。そうやなぁ、おっ、こいつはどないや?元気に走り回っとるで。」
すごい元気そうなんが一匹おったからそいつにしたんよ。おっさんは、
「おぉ、こいつはなぁ『利夫』って名前なんや!『利夫』はずっとおっちゃんと一緒に頑張ってきたかわいい奴なんやで。せやけどボクに預けるわ!大事に育ててやってや!」
「うん、分かった。そうか、この亀は『利夫』っていうんかぁ。『利夫』のことを大事にするわな。おっちゃん、ありがとう!」と感激して家に帰ってん。

オカンに『エサ代』