『やぁ、お嬢さんパンはいかがかな?』
『衣はどうだい?どれも上質だよ。』
『宝石は?俺は美人に弱いんだ。安くしとくよ。』
「どれも素敵ね。」
そんな言葉を向けられ、クスッと笑うサフィに店主たちが頬を赤らめる。
サフィはこの国一の美女と謳われる王女だ。
今は日除けの布で身分を隠しているとはいえ、薄いベールから覗くその美貌までは隠すことができない。
「いや〜まいったな、そんな微笑み向けられたら男はイチコロだよ。これ持って来な!」
そんな言葉とともにあちこちからパンやネックレスや布が差し出される。
始めて王宮を抜け出しこのような状況になった時は慌てて突き返していたサフィも、今は慣れっこで「ありがとう」と微笑み返し素直にお言葉に甘えるようになった。
「なんて良い人たちなんだろう…。」
そう呟くサフィは、自分の微笑みが秘める威力を理解していない。