これはいつもサフィが街に行く時にする簡易的な変装だ。

口元もベールで隠し、目元以外を全て覆う。

こうすればほとんどの人は王宮に出入りする商人の女だと思い込み、誰もサフィに気を止める者はいない。


身支度を整えテラスに出ると、丁寧に彫られた柱の彫刻の隙間に足をかけ、猿のように柱を降りて行く。


ここで兵士か誰かに見つかったら終わりだ。
サフィはなるべく音を立てないようにゆっくりと降りて行った。


そしてやっと地面にたどり着くと、辺りを見回して誰もいないことを確認し、次の塀に手をかけた。