サフィもアナスが自分のことを想って、あのような態度をとっていることは分かっている。
しかし、
「なんで分かってくれないんだろう…。」
大国の王女で欲しがれば何でも手に入るサフィが、今何よりも欲しいものは『たった一つの真実の愛』だった。
サフィは金や宝石で煌びやかに飾られた天井を見て溜息をついた。
「金も宝石も美しい衣も、何もいらない…だから、私を自由にして。」
サフィのそんな願いは無駄に広いこの空間に溶けて消えて行った。
「…って、落ち込んでてもしょうがないわね!久しぶりに街にでも行こうかしら。」
サフィはそう呟くとベットから起き上がり、日除けとして垂らされていた布を引き抜いて体に巻きつけた。
そしてその大きな布を頭まで被せ、キャラバンの女のような格好に変装した。