今は、梅雨の時期の六月。

雨が上がったばかりで水たまりが
そこら中に広がっている。



「おー、雨上がってる!」


パシャパシャと音をたてながら
歩く、1人の少女…。


じゃなくて、女性。


私、春川鈴香は
夕飯の買い出しの帰りだった。


本来なら、大学へ通うつもりだったのだが

私の成績では大学へは進めなかった。


ので、今絶賛一人暮らし中であり
アルバイト生活をしている。


「………げっ!」

思わず声をもらした。


さっきまで晴れていた空が
だんだん曇って行く。

「早く帰らないと……って、あれ?」

駆け出そうとすると、ふと目に入った
猫の姿。

「にゃー…」

おそらく、白猫…。
だが、雨のせいなのか少々彼方此方に泥が跳ねている。



「君、どうしたの?」

猫に近づき声を掛ける。
しかし、猫が返答するわけもなく…。


「にゃー…。」


この繰り返しである。


「んー…どーしようかな。このまま見捨てるわけにも…」

悩んでいると足元に
猫が体を擦り付けて、ゴロゴロと喉を鳴らしている。

猫のその行動で、私の心は決まった。


「…うちに来る?」

連れて行く気満々で
しゃがみ込み、手を伸ばして猫の額を優しく撫でる。

すると、猫は私の方へ近づき膝の上へ
ちょこんと乗った。


「っ〜……!!可愛いっっ!連れていこー!」


そう言った私は、猫を抱きかかえ
急ぎ足で家へ向かった。








この選択が間違いだったと私が気づくのは

家へ入った後である。