三日後、俺達は漸く下坂された将軍徳川家茂公を出迎え、金城(大阪城)手前、天満橋までをその警護にあたった。
それからまた数日、今度は京へと上られる家茂公の先陣警護を任され、大坂街道を一路伏見へ入るとその日はそのまま伏見の警護に。
翌日入京し、二条城までの道程を無事何事もなく護衛し終えて。
俺達は約半月ぶりとなる壬生の屯所に帰陣した。
こいつが甘党なのは承知している。
だがしかし実のところまだ知り合って一年も経っていない。こうして新年を迎えたのも初めて。
故に、これを見るのも初だ。
監察仲間の四人に買ってきたおこしの礼として作ってくれたモノ。
喜んでくれたのは俺も嬉しい。
せやけど……。
「なぁ島田、これは何や?」
手にした椀を見つめながら問えば、そいつは事も無げに言ってのけた。
「何って、どう見ても汁粉だろう? 鏡開きの餅を少しとっておいたんだ」
汁粉……?
甘ったるい匂いの漂いくるその椀は、汁はどこだと問いたい程に小豆で埋め尽くされているものの、確かに一見汁粉に見えないこともない。
ついさっき朝餉を食べたばかりと言うことも頑張って置いておこう。
一番の問題は箸をつけたあとだ。
「……なぁ、なんか……めっさ糸ひくんやけど?」
これ、小豆色した納豆ちゃうん?
「砂糖だ」
「あー! 砂糖が飴になっとるんかぁー……ってあかんやろっ!!」
冷めたら確実にカチコッチ決定やん! 最早汁粉風の飴やがな!
「……あかん、だろうか?」
……んな捨て犬のような顔で見んとってぇや、自分目ぇだけはつぶらなんやから。
なんか俺めっさ悪いことしとる気ぃになるやんかぁ……。
「や、まぁ、うん、有り難くいただくわ……」
「そーか! 烝くんは細いからな! 少し砂糖多目に作ってみたんだ」
それありがた迷惑ぅ!!
……とは言えん。
「うん……おおきにな」
だってええ奴なんやもん。