のんびりとしたその声は土方副長のものではない。


勿論、俺でもない。


くるりと振り返れば丁度俺の真後ろになる縁先に腰掛け、膝についた手に顎を乗せてにこにこと此方を見やる青年の姿があった。


いつの間に。流石に気配の消し方は上手いな。


思わず半目になった俺に青年こと沖田くんは慌てた様子で掌を振った。


「別に嫌味じゃありませんよ? 土方さんにまでお土産を用意していた貴方が律儀で可愛いなと本気で思っていますから!」


や、それは本気で思わんでくれ。


律儀は兎も角可愛いてなんやねんな。


あんさんの可愛いの基準がわからんわい。


お世話になっとる上役にこんなん渡すくらい別にちーともかいらしことあらへんちゅーねん。


またそれが本気に見えるから質が悪い……。


短く溜め息を溢して、長く無駄になりそうな反論を飲み込んだ。


「いつからそこに?」

「えっと、お二人が見つめ合ってる時からですね。何だか睦まじげだったので堪らなく気になっちゃいましたっ」

「誤解を招く言い方は即刻止めてください」


その言い回しはわざとか!?


どこぞで誰かが聞いて勘違いしたらどーすんねんっ。


俺は……も不本意やけど!土方副長にあらぬ噂がたってしもたら申し訳なさ過ぎるやろ。


「? 何か変でしたか?」

「山崎、言うだけ無駄だぞ。これはそーゆー奴だ。たまに流れるおかしな噂はこいつが火元だからな」


……!


ほな原田くんと永倉くんが懇ろやーとか、そこに藤堂くんも入って泥々三角関係に発展! とか、山南さんと井上さんが壬生寺で密やかに逢引き! みたいな事実無根の妙ちくりんな噂はこん人が火元やったんか!!