ぬれた髪をハンカチで拭いた。
びしょびしょになった髪には意味もない行動だったけれど、ベンチに座り押さえられない
不安な気持ちを一緒に拭っていた。
涙が後から後から流れ落ちた。
「和奏ちゃん」
やさしい声が聞こえた。
『マスター』
「やっぱりここだったか。電車で帰るつもり?航ちゃんが心配しているぞ。店に一緒に行こう」
そう言って、タオルを肩にかけてくれた。
『ありがと。でも今日は一人で帰りたい』
「そうか。なにがあったかわからないけど、私は二人を信じているからね。ねぇ、和奏ちゃん…」
私は頭をあげ、マスターの顔を見つめた。