それから、マスターのお店に行った。
航太はなにやら今日の計画の話をしている。
「おまたせ」
『わーい。マスターの入れてくれたコーヒー大好きなんだ』
「うれしいね。和奏ちゃん、ありがと。今日はシフォンケーキだよ」
「おいしいね。本当に幸せ気分」
「うまいなぁ。このケーキさ、俺、大好きなんだ…懐かしいなぁ…」
…懐かしい…
この言葉が気になり、ふとタカ先の顔を見つめた。
遠くを見つめるその目には…
…えっ、涙…
柚葉はカウンターに置いてあった貝殻の本を見ていて気づいていないみたい。
「ちょっと、トイレ」
タカ先が席を立った。