ドアを開けると、やさしいベルの音が私たちを迎えてくれた。
店の棚にはやわらかい色合いのグラスランプが飾られてある。
『きれい』
私が見つめていると、男の人はにっこり笑いながら言った。
「これもさっきの、浜辺のいいもののひとつ」
「マスター、もしかして、さっきのガラスの欠片ですか?」
航太の問いに、やさしく頷く。
「本当は海にあるべきものではないガラスの欠片だけど、遠い海から流れ着いたものや、浜辺に捨てられたものが、波で何回もやさしくなでられながら角が取れ、小さなガラスになった。人間も同じかな。傷ついて、行き場を失って、心がとがった時、誰かのやさしさで癒される…でしょ。」